タクさん編 第16話|前より少し、近くなれた気がした。会話が自然になった夜

恋愛と本音

次にタクさんと会ったのは、
夜のごはんでした。

前みたいに、

何を話そう。

沈黙になったらどうしよう。

そんなことばかり考えていた私だったのに。

この日は、
席についてしばらくすると
不思議なくらい普通に話せていました。

映画みたいに隣に座っているわけでもない。

向かい合っているのに、
前より緊張しない。

話して、
笑って。

少し黙って。

またどちらかが話し始める。

その繰り返しが、
なんだかすごく自然でした。

「距離が近づく」って、
触れることだけじゃないんだ。

この夜、
初めてそんなことを思いました。

エリ
エリ

沈黙になっても焦らなくなった時に、「あ、前と違う」って思いました。

前は埋めたかった沈黙が、気まずくなくなっていた

最初に会った頃の私は、
会話が途切れるたびに少し焦っていました。

何か話さなきゃ。

つまらないって思われたらどうしよう。

次の話題、何にしよう。

そんなふうに、
頭の中でずっと会話を探していたんです。

でもこの日は違いました。

料理を食べながら、
ふっと会話が止まっても。

お互いに飲み物を飲んで、
少しだけ静かになる。

それでも、
前ほど気になりませんでした。

沈黙のあと、

「これ美味しいね」

ってタクさんが言って。

「ね。こっちも食べる?」

って私が返す。

それだけ。

特別な会話じゃないのに、
すごく心地よかったんです。

無理して盛り上げなくても、
一緒にいられる。

それって私にとって、
思っていた以上に大きな変化でした。

エリ
エリ

沈黙を怖がらなくなっただけで、こんなに一緒にいるのが楽になるんですね。

この日の約束が決まった時のうれしさは、前のお話に書いています♡

「もっと知りたい」って思う質問が増えていった

会話が自然になると、
私から聞きたいことも少しずつ増えていきました。

仕事のこと。

休みの日に何をしてるのか。

どんなお店が好きなのか。

昔どんな恋愛をしてきたのか。

最初の頃なら、

こんなこと聞いたら踏み込みすぎかな。

って考えていたようなことも、
この日は少し聞いてみたくなりました。

もちろん、
いきなり全部聞いたわけじゃないです。笑

でも、

「タクさんって休みの日、何してること多いの?」

って聞いたら、

そこからまた話が広がって。

タクさんの知らなかった一面を
少しずつ知っていくのが楽しかった。

そしてたぶん、
それと同じくらい。

私のことも
もう少し知ってほしいと思っていました。

“会って楽しい人”から、

“もっと知りたい人”へ。

気づかないうちに、
私の中でタクさんの存在が
少しずつ変わっていたんだと思います。

エリ
エリ

質問が増えるって、もう結構気になってる証拠ですよね。笑

自分のことを話すのも、前より怖くなくなった

タクさんのことを聞くだけじゃなくて、
私も少しずつ自分のことを話しました。

仕事で疲れた日のこと。

ひとりで飲むのが好きなこと。

休みの日はカフェでぼーっとしてること。

恋愛になると、
ちょっと考えすぎるところがあること。

全部を話したわけじゃありません。

でも、
最初より少しだけ
素の自分を出せていた気がします。

好きになりかけている人には、

良く見られたい。

嫌われたくない。

そう思うのが普通なのかもしれません。

でも、
ずっと“良く見せた自分”でいるのって
やっぱり疲れます。

少しずつでも、
普段の自分を見せられる。

その時に相手が普通に笑ってくれたり、

「それエリっぽいね」

って言ってくれたりすると、

なんだかほっとするんですよね。

この日の私は、

タクさんの前で
少しだけ力を抜けるようになっていました。

エリ
エリ

好きな人の前で“ちゃんとした私”じゃなくても大丈夫って思えると、すごく楽になります。

何気ない一言なのに、少し特別に聞こえた

会話の途中で、
タクさんがふっと笑って言いました。

「エリって、最初より全然話すようになったよね」

その言い方が、
からかう感じでもなくて。

ただ、
ちゃんと見てくれていたんだなって思える言い方でした。

私は少し照れながら、

「最初は緊張してたからね。笑」

って返しました。

するとタクさんは、

「今の方がいいけどね」

って。

たったそれだけ。

でも、その一言が
妙に頭に残りました。

“今の方がいい”

その言葉が、
普段の私を肯定してもらえたような気がして。

うれしいのに、
ちょっと恥ずかしくて。

私はそのあと、
少しだけタクさんの顔を見られなくなりました。笑

エリ
エリ

こういう何気ない一言の方が、あとからずっと残ったりするんですよね。

好きになる時って、派手な出来事よりこういう瞬間なのかも

恋愛って、
何か大きな出来事があった瞬間に
急に始まるものだと思っていました。

告白されたとか。

手をつないだとか。

特別な場所に連れていってもらったとか。

でも、
実際はもっと小さいことの積み重ねなのかもしれません。

沈黙が気まずくなくなったこと。

何を話そうって考えなくなったこと。

自分のことを少しずつ話せるようになったこと。

相手のことを、
もっと知りたいと思ったこと。

そして、

何気ない一言が
うれしく感じるようになったこと。

ひとつひとつは
本当に小さいことです。

でも、
そういう小さい変化が重なって、

“この人、ちょっと特別かも”

って気持ちになっていく。

この夜の私は、
まだ「好き」とまでは言葉にしていなかったけど。

たぶん、
もうかなり近いところまで来ていたんだと思います。

エリ
エリ

好きって、気づいた時にはもう結構進んでるものなのかもしれません。

帰り道、「また会いたい」がちゃんと自分の本音になった

お店を出たあとの帰り道。

前みたいに、

今日はどうだったんだろう。

タクさんは楽しんでくれたかな。

そんなことばかり考えてはいませんでした。

もちろん、
少しは気になりました。

でもそれ以上に、

「もうちょっと一緒にいたかったな」

って思っていました。

そして自然に、

「また会いたいな」

とも。

前までは、
タクさんが私をどう思っているのかを
気にする方が大きかったんです。

でも、この日は違いました。

相手の気持ちを知りたいより先に、

私はまた会いたい。

そう思えていた。

それが、
自分の中ではすごく大きな変化でした。

恋愛って、
相手からどう見られているかばかり気にしている時より、

「私はこの人とどうしたいんだろう」

って考えられるようになった時の方が、
自分の気持ちが少し見えてくるのかもしれません。

この夜の私の答えは、
すごくシンプルでした。

また、タクさんに会いたい。

それだけでした。

エリ
エリ

「相手はどう思ってる?」より先に「私はまた会いたい」が出たの、今思うと結構大きかったです。

好きかどうか迷った時は、自分の中の“また”を見てみる

好きかどうかって、
意外と自分でも分からない時があります。

ドキドキするから好きなのか。

寂しいだけなのか。

優しくされたから気になっているだけなのか。

考え始めると、
答えがどんどん分からなくなることもあります。

でも、
あとから振り返って思うのは、

自分の中に“また”が増えているかどうか。

また話したい。

また会いたい。

また一緒に笑いたい。

またこの人のことを知りたい。

そういう気持ちが増えているなら、

少なくとも、
その人は自分の中で少し特別になっているんだと思います。

無理に、

「これは恋だ」

ってその場で答えを出さなくてもいい。

でも、
自分の中に増えていく“また”は、
ちゃんと見てあげてもいい。

この頃の私は、
そんなふうに少しずつ
タクさんへの気持ちを認め始めていました。

エリ
エリ

「また」が増えてる時って、たぶん心はもうちゃんと動いてるんですよね。

恋愛のことを考えすぎた日は、ひとりでゆっくりする時間も大事にしています。

距離が近づくって、安心できることなのかもしれない

この日の帰り道。

私は、
前より少しだけタクさんとの距離が近づいた気がしていました。

でもそれは、
ドキドキが増えたとか、
何か特別なことが起きたからじゃありません。

むしろ逆で。

前より緊張しなくなった。

沈黙が気まずくなくなった。

自分のことを話しても大丈夫だと思えた。

相手のことを、
もっと知りたいと思えた。

そういう小さな安心が増えていったことで、

「あ、前より近くなったかも」

って感じたんだと思います。

恋愛って、
刺激が強いほど本物ってわけじゃない。

一緒にいる時に、
少しずつ力を抜けるようになること。

その人の前で、
自分らしくいられる時間が増えること。

それもきっと、
距離が縮まっているサインなんですよね。

この夜の私は、
まだタクさんに何も伝えていませんでした。

でも、

また会いたい。

もっと知りたい。

そんな気持ちは、
もう前よりずっとはっきりしていました。

エリ
エリ

ドキドキより「一緒にいて楽」が増えた時に、私は距離が近づいたって感じるのかもしれません。

最初の頃は、
会話が止まるだけで不安になっていました。

何を話そう。

どう思われてるんだろう。

そんなことばかり考えていた私。

でも、
何度か会っていくうちに、

沈黙が気まずくなくなって。

相手のことをもっと知りたくなって。

私のことも少しずつ話せるようになって。

気づけば、

「また会いたい」

がちゃんと自分の気持ちになっていました。

好きになる時って、
派手な出来事が必要なわけじゃない。

何気ない会話や、
安心できる時間や、
小さな一言。

そういうものが積み重なって、
少しずつ特別な人になっていくのかもしれません。

この頃の私はまだ、

「好き」

とは口にしていませんでした。

でも、
気持ちはもう少しずつ
そっちに向かっていたんだと思います。

エリ
エリ

ここまで来たら、もう自分でも薄々分かってたんですよね。笑

次回、タクさん編 第17話。

会っていない時間まで、
気づけばタクさんのことを考えていました。

連絡が来るとうれしい。

次に会える日が楽しみ。

そしてある夜、

「これって、もう好きなのかも」

って、
ようやく自分の気持ちを認め始めたんです。

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