付き合ってからも、
タクさんのことはちゃんと好きでした。
会えば楽しいし、
隣を歩いているだけでうれしい。
だから第20話で感じ始めた寂しさも、
「私がちょっと考えすぎてるだけかな」
くらいに思っていたんです。
付き合ったからって、
毎日連絡を取らなきゃいけないわけじゃない。
毎週会わなきゃいけないわけでもない。
頭では分かっていました。
それでも私は、
次はいつ会えるんだろう。
今度はタクさんから
「会いたい」って言ってくれるかな。
そんなことを、
前より少し気にするようになっていました。
そしてある日のデートで。
本当に何気ない会話の中で、
タクさんが言った一言に、
私は初めて、
「あれ……?」
と思ったんです。
嫌なことを言われたわけじゃありません。
冷たくされたわけでもありません。
ただその瞬間、
私が思っていた“恋人との距離”と、
タクさんが心地いいと思っていた“恋人との距離”は、
もしかしたら同じじゃないのかもしれない。
そんなことを、
初めて意識しました。

好きなのは変わらないんだけど…。なんか、ちょっとだけ違うのかなって思ったんです。
- 付き合ってからも、会える日は普通に楽しかった
- 次の休みの話をしたのは、私からでした
- 「その日は家でゆっくりしようかな」って、タクさんは普通に言った
- あの一言が、帰り道になっても少しだけ残っていた
- 私は「好きなら会いたい」が、普通だと思っていた
- 好きの大きさじゃなくて、“心地いい距離”が違った
- それでも私は、「会いたい」と素直に言えなかった
- 言わなくても分かってほしい。それが少しずつ、すれ違いになっていった
- 「温度差」だと思ったけど、好きの大きさだけの問題じゃなかった
- 違っていることより、言えなかったことの方が苦しかった
- この時の私は、まだ「二人なら大丈夫」と思っていました
- 好きでも、心地いい距離は同じとは限らない
- 次回、タクさん編 第22話。
付き合ってからも、会える日は普通に楽しかった
その日も、
最初はいつも通りでした。
待ち合わせをして、
一緒にごはんを食べて。
仕事の話をしたり、
最近あったどうでもいい話で笑ったり。
付き合う前よりは、
隣にいることにも少し慣れてきていました。
「彼氏とデートしてる」
というだけで緊張していた頃とは違って、
タクさんの隣が
少しずつ“いつもの場所”になってきた感じ。
それが私は、
すごくうれしかったんです。
だからこの日の私は、
二人の間に何か問題があるなんて、
全然思っていませんでした。

この頃はまだ、会えたら普通にうれしかったし、ずっと一緒にいたいって思ってました。
次の休みの話をしたのは、私からでした
ごはんを食べながら、
なんとなくお互いの仕事の話になって。
私はその流れで、
「次の休みっていつ?」
と聞きました。
深い意味はないように言ったけど、
本当は少しだけ期待していました。
休みが合ったら、
また会えるかもしれない。
できればタクさんの方から、
「じゃあ、その日会う?」
って言ってくれたらうれしいな。
そんなことを思いながら、
何でもない顔で聞いていました。
タクさんは予定を思い出すように少し考えて、
普通に休みの日を教えてくれました。
でも、そのあと。
「エリは?」
と聞かれて、
私も自分の休みを伝えたんです。
偶然、
一日だけ同じ日がありました。
私は心の中で、
「あ、会えるかも」
って思いました。

休み一緒じゃんって分かった瞬間、私はもう「会える」って思っちゃってたんだよね。
「その日は家でゆっくりしようかな」って、タクさんは普通に言った
同じ休みだと分かって、
私はタクさんの次の言葉を
少しだけ待っていました。
でもタクさんは、
「あー、その日は久しぶりに家でゆっくりしようかな」
って。
本当に普通の顔で言ったんです。
その瞬間、
私は一瞬だけ、
「……そっか」
ってなりました。
もちろん、
何もおかしくありません。
休みの日に一人で過ごしたいことなんて、
誰にでもある。
私だって、
一人でカフェに行ったり、
家でのんびりしたい日はあります。
だから、
「え、会わないの?」
なんて言えるわけもなくて。
私はそのまま、
「いいね、ゆっくりできるじゃん」
って笑いました。
たぶんタクさんは、
私がそこで少し寂しくなったことに
気づいていなかったと思います。
それくらい、
何でもない会話でした。
でも私の中では、
小さく何かが引っかかりました。
私は、
休みが一緒なら会いたいと思った。
タクさんは、
休みが一緒でも
一人で過ごしたいと思った。
どっちが悪いわけでもない。
ただ、
同じ“好き”でも、
恋人と一緒にいたいと思う距離は
同じじゃないのかもしれない。
そのことに初めて気づいた瞬間でした。

会いたくないって言われたわけじゃないんです。でも私は、勝手に「会える」って期待してたんだよね。

あの一言が、帰り道になっても少しだけ残っていた
そのあとのデートも、
普通に楽しかったです。
タクさんが急に冷たくなったわけでもないし、
私もずっとそのことを
考えていたわけじゃありません。
話して、笑って、
いつも通りの時間を過ごしました。
でも帰り道。
駅に向かって歩きながら、
さっきの会話を
ふと思い出したんです。
休みが一緒だと分かった瞬間、
私は自然に、
「じゃあ会えるかも」
って思った。
でもタクさんは、
「久しぶりに家でゆっくりしようかな」
って思った。
たったそれだけの違いなのに、
なぜかその日は、
いつもより少しだけ心に残りました。
「私が会いたいって思いすぎなのかな」
そんなことまで考えていました。

会わないことが嫌だったんじゃなくて、同じ休みだって分かった時の反応が違ったことが寂しかったのかも。
この時に感じた「寂しい」の正体については、
前のお話でも書きました。
タクさんが冷たかったわけじゃないのに、
なぜか少しだけ寂しかった。
今思えば、
今回の“距離感の違い”に気づく
最初のサインだったのかもしれません。
私は「好きなら会いたい」が、普通だと思っていた
今思えば、
ここで初めて気づいたんだと思います。
私は好きな人ができると、
会えるなら会いたい。
予定が合うなら、
少しでも一緒にいたい。
そう思うタイプでした。
もちろん、
毎日ずっと一緒にいたいわけじゃない。
自分の時間だって欲しいし、
友達と遊んだり、
一人で過ごしたりする時間も好きです。
それでも、
好きな人と休みが重なったら、
まず最初に
「会えるかな」
って考えてしまう。
私はずっと、
それが恋人同士なら
自然なことだと思っていました。
でも、
タクさんにとっては
少し違ったのかもしれません。
好きだからといって、
空いている時間を
全部恋人と過ごしたいわけじゃない。
一人で過ごす休日も大切にしたい。
たぶん、
それもタクさんにとっては
普通だったんだと思います。

どっちが正しいとかじゃないんだよね。ただ、私はこの時まで「好きなら同じように会いたくなる」って思ってた。
好きの大きさじゃなくて、“心地いい距離”が違った
タクさんが私を
好きじゃなかったわけではないと思います。
会えば優しかったし、
一緒にいる時に
大切にされていないと感じたこともありませんでした。
だからこそ、
余計に分からなかったんです。
好きなのに、
どうして私は
こんなに寂しくなるんだろう。
でも今なら、
少し分かります。
違っていたのは、
好きの大きさというより、
恋人とどのくらい近くにいると
安心できるか。
その“心地いい距離”だったんだと思います。
私は、
会いたいと思ってもらえることで
安心するタイプ。
タクさんはたぶん、
会っていない時間があっても、
関係が変わったとは
感じないタイプでした。
好きなのは同じでも、
安心の仕方まで
同じとは限らない。
付き合って初めて、
私はそのことを知りました。

あの頃は「温度差」だと思ってたけど、今なら“安心できる距離の違い”だったのかなって思います。
それでも私は、「会いたい」と素直に言えなかった
だったら、
私から
「その日、会いたい」
って言えばよかった。
今ならそう思います。
でも当時の私は、
それができませんでした。
タクさんが
「家でゆっくりしたい」
と言ったあとで、
「私は会いたい」
と言うのが、
なんだか相手の時間を
奪うみたいに感じてしまったんです。
それにもう一つ。
本当は、
私から誘うことよりも、
タクさんから
「会おうよ」
って言ってほしかった。
たぶん私は、
予定を作りたかっただけじゃなくて、
“私と同じくらい会いたいと思っている”
その安心が欲しかったんだと思います。
でも、
そんな本音まで
うまく言葉にはできませんでした。

「会いたい」って言えば済むのに、好きだからこそ相手からも言ってほしくなっちゃうんだよね…。
私は昔から、
好きな人ができると
相手のちょっとした言葉や反応を
気にしてしまうところがあります。
「私ってどんな恋愛をするんだろう」
そんな自分の恋愛観については、
こっちでも書いています。

言わなくても分かってほしい。それが少しずつ、すれ違いになっていった
私はタクさんに、
「もっと会ってほしい」
と言いたかったわけではありません。
一人の時間をやめてほしいとも、
私を最優先にしてほしいとも思っていませんでした。
ただ、
たまにはタクさんの方から
「次いつ会える?」
って聞いてほしかった。
「会いたい」
って言ってほしかった。
それだけで私は、
安心できたんだと思います。
でも私は、
その気持ちを言葉にしませんでした。
付き合っているんだから、
これくらいは
言わなくても分かるんじゃないか。
好きなら、
同じように会いたいって
思うんじゃないか。
そんな期待を、
どこかで持っていたんです。
でも当然、
言っていない気持ちまで
相手に伝わるわけじゃない。
タクさんからすれば、
いつも通り付き合っているだけ。
私だけが少しずつ、
「なんで分かってくれないんだろう」
と思い始めていました。

言ってないのに分かってほしいって、今ならちょっと無理があるって分かるんだけどね…。
「温度差」だと思ったけど、好きの大きさだけの問題じゃなかった
当時の私は、
こういう違いを感じるたびに、
「私の方が好きなのかな」
って考えていました。
会いたいと思う回数が多い方が、
好きな気持ちも大きい。
連絡したいと思う方が、
相手を大切にしている。
どこかで、
そんなふうに思っていたんです。
でも今は、
少し違います。
一人の時間が必要な人もいる。
毎日連絡を取らなくても、
相手をちゃんと好きでいられる人もいる。
反対に私は、
会ったり、
「会いたい」と言ってもらったりすることで、
「大丈夫なんだ」
と安心するタイプでした。
だからタクさんとの違いを、
“好きの量の違い”
みたいに感じてしまった。
でも本当は、
愛情を感じる方法と、
恋人との心地いい距離が
少し違っていただけなのかもしれません。

会いたい回数だけで「どっちの方が好き」なんて、本当は決められないんだよね。
前のお話では、
付き合えたのに、
どうして私は寂しいんだろう。
そんな自分の気持ちについて書きました。
今振り返ると、
あの寂しさの中には、
今回気づいた“二人の距離感の違い”も
混ざっていたんだと思います。
違っていることより、言えなかったことの方が苦しかった
恋人同士でも、
考え方が全部同じなんて
たぶんありません。
会いたい頻度も、
連絡を取りたい頻度も、
一人で過ごしたい時間も違う。
今なら、
それ自体は
おかしなことじゃないと思えます。
でも当時の私は、
「私はもう少し会いたい」
という一言さえ、
うまく言えませんでした。
重いと思われたくない。
面倒くさい彼女に
なりたくない。
タクさんの時間を
邪魔したくない。
そうやって飲み込んでいるうちに、
本当はただ寂しかっただけなのに、
「どうしてタクさんは
私と同じじゃないんだろう」
という気持ちに
少しずつ変わっていったんです。
違うことそのものより、
違うと気づいた時に
二人で話せなかったこと。
たぶん私たちにとっては、
そっちの方が
大きかったんだと思います。

「私はこうしてもらえるとうれしい」って、それだけでも言えたらよかったんだよね。
私は昔から、
好きな人ができると
相手の言葉や反応を気にして、
自分の気持ちを
後回しにしてしまうところがあります。
そんな私が、
どんな男性に惹かれやすいのか。
自分の恋愛について振り返った話は、
こちらにも書いています。
この時の私は、まだ「二人なら大丈夫」と思っていました
ここまで書くと、
この頃からもう、
タクさんとの関係が
うまくいっていなかったように
見えるかもしれません。
でも、
そんなことはありませんでした。
私はまだ、
タクさんのことが好きでした。
次に会える日は楽しみだったし、
LINEが来ればうれしかった。
一緒にいる時は、
普通に笑っていました。
だから、
このくらいの違いなら
きっと大丈夫。
付き合っていれば、
そのうちお互いのことも
もっと分かっていく。
私はそう思っていました。
この時に初めて見えたのは、
“別れの理由”なんかじゃなくて。
ただ、
「私たちは同じじゃないんだ」
という、
恋人になって初めて知った
小さな違いでした。

違うって分かっても、私はまだ「これから分かり合えばいい」って思ってたんです。
好きでも、心地いい距離は同じとは限らない
好きな人と付き合えたら、
不安はなくなる。
恋人になったら、
同じように会いたくなって、
自然に気持ちが
分かり合える。
あの頃の私は、
どこかでそんなふうに
思っていました。
でも、
好きな気持ちがあっても、
安心できる距離まで
同じとは限らない。
一人の時間が必要な人もいれば、
会うことで安心する人もいる。
言葉がなくても大丈夫な人もいれば、
「会いたい」の一言で
安心できる人もいる。
どちらが正しい、
ということじゃなくて。
大切だったのは、
私はどんな時に寂しくなるのか。
どんなことで安心できるのか。
それを自分で知って、
相手にも伝えることだったんだと思います。
私はこの時、
タクさんとの違いには
気づき始めていました。
でも、
自分が本当はどうしてほしいのかまでは、
まだちゃんと言葉にできていませんでした。

違うことがダメなんじゃなくて、その違いを二人で話せるかどうかだったのかもしれないね。
ちなみに私自身も、
一人で過ごす時間が
嫌いなわけではありません。
むしろ、
一人でカフェに行って
ぼーっとする休日も好きです。
そんな何でもない
私のひとり時間については、
こちらに書いています。
次回、タクさん編 第22話。
この時はまだ、
「距離感が少し違うんだな」
それくらいに思っていました。
タクさんのことは好きだったし、
私も、
もう少し上手に付き合えるようになればいい。
そう思っていたんです。
でも、
一度気づいた小さな違いは、
別の場面でも
少しずつ見えるようになっていきました。
今までなら気にしなかったことに、
「あれ?」
と思うことが増えて。
それでも私は、
別れたいわけじゃなかった。
むしろ、
好きだからこそ、
どうしたらこのまま
うまく付き合っていけるんだろう。
そんなことを
考えるようになっていました。
そして初めて、
「好きだけど、
このままで大丈夫なのかな」
という気持ちが浮かびます。
次回は、
別れたいわけじゃないのに、
この恋を続けていいのか
迷い始めた頃のことを書きます。



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